セロ弾きのゴーシュその57
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セロ弾きのゴーシュその57

作品:セロ弾きのゴーシュ
作者:宮沢賢治

 すると野鼠はびっくりしたようにきょろきょろあたりを見まわしてから
「いえ、もうおパンというものは小麦の粉をこねたりむしたりしてこしらえたものでふくふく膨《ふく》らんでいておいしいものなそうでございますが、そうでなくても私どもはおうちの戸棚《とだな》へなど参ったこともございませんし、ましてこれ位お世話になりながらどうしてそれを運びになんど参れましょう。」と云いました。
「いや、そのことではないんだ。ただたべるのかときいたんだ。ではたべるんだな。ちょっと待てよ。その腹の悪いこどもへやるからな。」

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底本:「新編 銀河鉄道の夜」新潮文庫、新潮社
1989(平成元)年6月15日発行
1994(平成6)年6月5日13刷
底本の親本:「新修 宮沢賢治全集」筑摩書房
入力:水口充、野口英司
1999年7月23日公開
2004年3月22日修正
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)眼《め》を

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)第六|交響楽《こうきょうがく》
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