銀河鉄道の夜その210
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銀河鉄道の夜その210

作品:銀河鉄道の夜
作者:宮沢賢治

 ジョバンニはばねのようにはね起きました。町はすっかりさっきの通りに下でたくさんの灯を綴《つづ》ってはいましたがその光はなんだかさっきよりは熱したという風でした。そしてたったいま夢《ゆめ》であるいた天の川もやっぱりさっきの通りに白くぼんやりかかりまっ黒な南の地平線の上では殊《こと》にけむったようになってその右には蠍座《さそりざ》の赤い星がうつくしくきらめき、そらぜんたいの位置はそんなに変ってもいないようでした。
 ジョバンニは一さんに丘を走って下りました。まだ夕ごはんをたべないで待っているお母さんのことが胸いっぱいに思いだされたのです。どんどん黒い松《まつ》の林の中を通ってそれからほの白い牧場の柵《さく》をまわってさっきの入口から暗い牛舎の前へまた来ました。そこには誰かがいま帰ったらしくさっきなかった一つの車が何かの樽《たる》を二つ乗っけて置いてありました。

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底本:「新編 銀河鉄道の夜」新潮文庫、新潮社
   1989(平成元)年6月15日発行
   1994(平成6)年6月5日13刷
底本の親本:「新修宮沢賢治全集 第十二巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年1月
入力:中村隆生、野口英司
校正:野口英司
1997年10月28日公開
2004年3月2日修正
青空文庫作成ファイル:
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