銀河鉄道の夜その50
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銀河鉄道の夜その50

作品:銀河鉄道の夜
作者:宮沢賢治

 ジョバンニは、もう露の降りかかった小さな林のこみちを、どんどんのぼって行きました。まっくらな草や、いろいろな形に見えるやぶのしげみの間を、その小さなみちが、一すじ白く星あかりに照らしだされてあったのです。草の中には、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、ある葉は青くすかし出され、ジョバンニは、さっきみんなの持って行った烏瓜《からすうり》のあかりのようだとも思いました。
 そのまっ黒な、松や楢《なら》の林を越《こ》えると、俄《にわ》かにがらんと空がひらけて、天《あま》の川《がわ》がしらしらと南から北へ亘《わた》っているのが見え、また頂《いただき》の、天気輪の柱も見わけられたのでした。つりがねそうか野ぎくかの花が、そこらいちめんに、夢《ゆめ》の中からでも薫《かお》りだしたというように咲き、鳥が一|疋《ぴき》、丘の上を鳴き続けながら通って行きました。

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底本:「新編 銀河鉄道の夜」新潮文庫、新潮社
   1989(平成元)年6月15日発行
   1994(平成6)年6月5日13刷
底本の親本:「新修宮沢賢治全集 第十二巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年1月
入力:中村隆生、野口英司
校正:野口英司
1997年10月28日公開
2004年3月2日修正
青空文庫作成ファイル:
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